こんにちは!
今の世の中について、どう思いますか?(大雑把(笑))
僕はまだ社会に出たこともないほんのペーペーですけど、世界のどっかしらで起きた出来事で市場が不安定になってどーのこーのだとか、破壊的な程圧倒的な外国企業の進出だとかなんとか、色々大変そうな話ばかり耳に入ってきます。
なんだか面倒くさそうで複雑そうで楽しくなさそうな世の中になんて出ていきたくないし、どこか世界の影響なんか小さいところで自給自足で暮らしていきたいなんて半分冗談半分本気で考えたことのある学生諸君は少なくないんじゃないでしょうか?(僕も考えたことがあります(笑))
そんなことをいっても、世界との繋がりを断つのは容易なことではありません。(断ったつもりになることはできるかもしれませんが)
かつて鎖国を行っていた江戸幕府も、圧倒的な武力を持つ帝国主義諸国を前に変わらざるをえませんでした。
世界はどうしようもなく繋がっているし、相互作用による変化のスピードはどんどん速くなっています。
それは便利さも生みますが、一方で人間は基本的に安定を求めます。
なのでスムーズに変化することは珍しいです。個人ならまだしも会社や国家単位になると、様々な利益が絡み合って手に負えなくなります。
そして変化させる力とそれを妨げる力の歪みは、ある一部分や個人に負担となって現れることになるのではないでしょうか?
『獣の奏者Ⅲ、Ⅳ』に見る、変化の中で選択を迫られる人々のあり方
『獣の奏者』はもともとⅠ、Ⅱで一度完結しています。(参照⇒苦しい時にこそ読みたい!ファンタジーの底力に刮目せよ!『獣の奏者Ⅰ、Ⅱ』(上橋菜穂子))
Ⅲ、Ⅳは上橋さんがアニメ版の制作に携わる中で『獣の奏者』の世界で新たに書きたいテーマを発見し執筆されました。
Ⅰ、Ⅱといえば美しいラストシーンが示す通り、思いを伝えるという営みがテーマで世界観はあくまでその為の舞台に過ぎないものです。
一方Ⅲ、Ⅳではむしろ世界の中での登場人物たちの振る舞いがテーマになっているように感じます。
(Ⅰ、Ⅱの紹介でもこのテーマに近いことを取り上げていますが、Ⅲ、Ⅳではよりこのテーマが強いです。)
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あらすじ
降臨の野の出来事(Ⅰ、Ⅱ巻)を乗り越えたエリンだったが、時代はエリンに安息の日々を許さなかった。
迫りくる隣国ラーザの脅威を前にエリンは否応なく運命に巻き込まれてゆく。獣の奏者として、母としてエリンが下す決断とは?
一筋の希望を胸に歩み続けるエリンを待ち受ける運命や如何に?
感想
エリンは本作では前作以上に難しい決断に迫られます。
一つを選べば、もう一つが成り立たないような。
でも一つを選んだからと言って諦めているわけではありません。状況が変われば成り立たなかったもう一つの方も成り立つかもしれない。
諦めていたらきっとラストシーンはありえなかったでしょう。
一方真王もその立場ならではの選択を迫られますが、エリン同様諦めません。
二人は似ています。自分の意志と他者への思いをどうにか融合させようとしている。
そんな二人はどこか自分という枠から解き放たれている気がします。
自分自身の犠牲すら自然に選択肢の中に入っているし、そこには悲壮感は感じられない。(決して自分を軽んじているわけではない)
逆に自分に囚われすぎている人ほど、責任を引き受けすぎて歪んでしまったり、逆に完全に責任を放棄してしまったりするのではないでしょうか?
二人が自分という枠を解き放つことができたのは、自らの持つ大きな力を自覚できたからかもしれません。(坂本龍馬とか歴史上の英雄なんかもそうかもしれません)
一方現代では個人がエリンのような大きな力を持つことは稀で、平等や民主主義の名のもと、名目上世界を変えていく力は個人個人に配られています。
もちろんその分、変化は目に見えないほど小さいかもしれません。
自分の力など無力だと感じると、自己を守ろうと強固な枠に囚われてしまう。
しかし確かに変化はあるはずです。
自分という枠に囚われず、少し枠をずらしてみる。自分も他者も嬉しい、そういうことができればいつか・・・。
読みやすさ
Ⅲ、Ⅳ各500ページ程です。
難解な表現もなく、状況も分かりやすいのですらすら読めます。
各4時間弱ほどで読めました。
まとめ
是非決断する人々と決断によって変化していく状況、受け継がれていく思い、それらが絡み合った美しい物語を味わってください!
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